地域+デザイン+商い=小商い?

最近読んだ本を2冊ご紹介します。
それぞれに出てくる、『デザイン思考』と『小商い』という言葉には重なる部分が多いように感じました。
また、熊本での私の活動とも重なる部分が多かったです。

地域を変えるデザイン

地域を変えるデザイン― コミュニティが元気になる30のアイデア - 英治出版オンラインストア

様々な地域の、活性化や問題解決への取り組みが紹介されています。
熊本の『一口城主制度』も紹介されています。

本書では、地域を変えるための考え方として『デザイン思考』なるものが紹介されています。

・地域が抱える社会課題の本質を心・身体・頭で直感的・身体的に捉える行為
・多種多様なステイクスホルダーがともに持続可能な美しい未来の姿を思い描き、地域に眠る資源を活用した新しい仕組みや経験(コト)を創出する行為
(地域を変えるデザイン 243ページ)

論理・分析よりも直感と身体、モノよりもコトを重視した思考のようです。
(後に紹介する『小商いのすすめ』に出てくる『ヒューマンスケール』という言葉と重なる部分があるように感じています)

そして、地域を変えるためにデザイン思考をもったコミュニティ、『デザインコミュニティ』になりましょうと提唱しています。
コミュ二ティには町内会や子ども会など、居住地に起因する『地域コミュニティ』と、趣味や勉強など興味に起因する『テーマコミュニティ』がありますが、いずれも「お客様」(行政頼みの地域コミュニティや、好きな事をやれば良いというテーマコミュニティ)になっているケースが多く、それゆえ、共同して社会に貢献する団体になれない。このように語られています。

持ち寄る物(コト)がない『お客様』はコミュニティから弾かれてしまう時代が近いのかもしれません。
「そんな事を言っても持ち出せる物(コト)がないよ」
という方は、次にご紹介する『小商いすすめ』を読んでみてください。
答えは書いて有りませんが、考えさせられる内容です。

小商いのすすめ

株式会社ミシマ社 | 本の一覧 | 原点回帰の出版社、おもしろ、楽しく!

この本で語られている『小商い』とは何か。
一言で言えば『ヒューマンスケールの復興』だと書かれています。
ヒューマンスケールとは「身の丈」や「身の程」などではなく、文字通り人間の間尺を差しています。
例えば『高速道路』は車を使う人には便利ですが、人間にとっては(歩いて目的地に向かうのであれば)単なる回り道になります。
(あくまで例であり、高速道路がいらないと書かれているわけではありません)
ヒューマンスケールを物差しにして、営みを考え直してみようという考え方です。
「いま・ここ」に責任を持つ生き方ともありました。
(2回、3回と読み込んでいけば、捕らえ方が変わってくるかもしれません。分かりやすく、読みやすく書かれているにも関わらず、難しい話でした)
また、国民経済という観点からは、経済をいかに均衡させるかの視点で考えるべきで、もし、拡大の道が閉ざされているのであれば、縮小させて均衡させる方策を模索するべきとあります。

本文中にソニーの前身(東京通信工業株式会社)の社是が紹介されていました。

一.不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的名活動に重点を置き、いたずらに規模の拡大を追わず
一.経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する

先日、熊本の古くからの企業さんの社是を拝見しましたが、同じ様な趣旨がかかれており、感銘を受けていたところです。

私の言葉では、とても全てを語る事はできません。興味を持たれましたら、是非、ご一読ください。

小商いは難しいですが

先日、「50年後の日本の人口は4132万人減る」というニュースがありました。
そんな中、大きなマンションが建てられたりするのを見ると考えさせられます。
マンションだけでなく、必要か否か、利用されるかさえ疑問に思われる、様々なものがドンドン作られています。
作る事だけでなく、使いこなす事や、なくす事にリソースを割いても(価値を与えても)良いのではと感じる事が多いです。

拡大を目指す事、世界で勝負するのは、もちろん悪い事ではないと思います。
勝算がある方たちはドンドン勝負すべきだと思います。同時に、勝算もないのにグローバリズムの流れに飛び込む行為は身投げと変わらないとも思います。
「他に選択肢がない」という言葉は、どなたからも聞きたくないものです。

「小商い」と「大商い」、双方が補完的に機能できないものでしょうか。
「大商い」をする方に、「小商い」の意義を考えていただくだけで違ってくると思います。
また、「大商い」を招き入れるコミュニティの方にも、彼等はいつか必ず去っていくという認識が必要ですね。
そして、その後、どのような状況になるかという想定。
やはり「他に選択肢がない」という言葉は、どなたからも聞きたくないです。

前職(パッケージソフト開発会社でしたが)でも、ここ数年は世界市場へのシフトがスローガンとなっていました。
私は、自分の仕事の継続可能性について考えていた時期です。
「好きこそものの上手なれ」という言葉もあります。
拡大とバランス、企業への貢献と地域への貢献どちらを選ぶか。
自分にとって継続可能(例えばこれから30年後)なのはどちらか。
考えた結果、生まれ故郷での『小商い』に挑戦することにしました。
(勝算ではなく、継続可能性ではかっているので無謀ですね)

定義も実践も、小商いは難しいです。

そもそも、『小商い』は拡大を目指す企業に所属しながら可能なのでしょうか?(誰でもが実践できる事?)
会社以外の、テーマコミュニティでの活動、地域コミュニティでの活動と、本業を並行して行う事で可能になるのでしょうね。
自分の身を守る意味でも、並行して、複数のコミュニティに所属する事は重要です。
そして、ほとんどの企業は副業にたいして厳しいですよね。
『小商い』で必ずしも貨幣を仕入れる必要はないのかもしれませんし、『小商い』を副業と考えてしまうと、ズレてしまいそうです。
デイトレードアフリエイトは『小商い』ではないでしょうから。(「いま・ここ」にコミットしていない)

熊本での活動に関していえば、、熊本のヒューマンスケールを掴む事に苦労しています。
東京での業務感覚との差は、想像以上に大きいです。
ギャップの理由や要因を考えていく作業は面白いですが、悠長な事も言っていられません。
また、コミュニティの一員になる事も重要です。おそらく、これが一番ですね。
そして、ITとは何か、より研ぎ澄まして、かつ、平易な言葉にする必要があります。
前職の製品は他社製品との比較で優位性を語れば済みましたが、熊本では、もっと、本質的に語る必要を感じています。
このように、手探りの部分がほとんどではありますが、ぼちぼちと『小商い』をしていきます。

最後に、『小商いのすすめ』の中で、ハッとさせられたくだりがありましたので、ご紹介しておきます。
原発に関しての記述ですが、このような文章がありました。

技術上の問題をなくすには、技術者を客観的な第三者でなく、当該の案件から利得を得ることのできるステークホルダーとして抱え込めばよい。
そうすることで、技術上の問題は、マネジメントの問題へと移転させることが可能になります。
(小商いのすすめ 本文117ページ)

怖いお話です。
これは、原発にかぎらず、我々の世界でも言えること。
肝に銘じておきます。